サメと猫

休学の年

もうすぐ大学が再開する。去年は、大学4年になるはずの1年を休学していた。去年の初めに休学の手続きをした時、復学するときにまた来てくださいと言われていた。世の中がこんなことになる前。ひとまず電話してみると、休学者宛に書類を送る予定なので、郵送で対応しますと言われてひと安心。

休学して何をしていたかいうと、何もしていない。もちろん実行するつもりの計画はあった。といっても、めっちゃバイトして金貯めて、しばらく外国ぶらつくぞっていう身もふたもない計画だけど。それも世の中がこんな事になっては叶うはずもなく、目的のない1年間の長期休みを過ごした。

大学3年の前期も終わる頃、就活が居場所を探しに頭の中を出入りし始めた。3年の夏はインターンも始まる。やりたいことも興味のあることもないので、漠然とした不安から早めに動き始めた。インターンを探しつつ、自己分析などして自分のやりたいことを見つけようとした。でもこれといった趣味も特技もないので、探す材料がずっと多めに勉強してきた英語くらいしかなかった。なんとなく海外志向でいい感じの名前知ってる企業の長期インターンにエントリーしたら、まあまあのとこまで通って、長期は落ちたけど2日間のインターンに行った。それなりに刺激も受けて、就活頑張るぞってなってたけど、興味もない分野の会社で、営業職につくなんて絶対に嫌だという意志だけが無駄に頑固で、どうしても就活に気持ちが乗らないでいた。

休学を考えた出したのはこの頃で、興味もない仕事仕方なくやるなんて嫌だし、そもそも仕事をしたくないのに一生働かなきゃいけないんだったら、一年くらい好きにしてもいいだろって思った。やりたいと思うことたくさんやってみれば、何か変わるかもしれない。一年くらいなら、費やしていいんじゃないか。大学の間、特に何もせずにきてしまったな、という思いと、将来やりたいことが何も見当たらないことから来る漠然とした虚無感。それが、休学を考えたとたん晴れる気がして、ますます乗り気になった。今思えば、単なる現実逃避の面もあっただろうと思う。

せっかくなら外国に行こうと思った。社会に出たら、数日で旅行には行けても仕事以外で長期滞在は難しい。行った先で何がしたいとかは特にないけど、一人で異国に住む経験は絶対に価値あるものになると思った。でも結局就職を無視はできなくて、就活の時不利にならない休学の口実を考え、留学や海外インターンを考えたけど、そんなお金は無い。ワーホリは就活ではそこまで印象よくは無いけど、現地で働けるので費用が抑えられる。でも国が限られる。自分が行きたい国には、ワーホリ制度がなかった。

しばらくいろいろ悩んでいたけれど、ある時に、やりたいことやってみようって休学するのにやりたく無いことやってどうするんだと思い、もう外国行く口実を探すのは辞めることにした。行ってみたいから行って、住んでみたいから住むのだ。行ってみたかった国はスウェーデン。休学期間前半で貯められるだけお金を貯めて、夏の終わり頃から、貯金で暮らせるだけ滞在しようと思った。

そんなわけで、バイト先に事情を話して通しのシフトで週5.6日のペースで働き始め、気合を入れて頑張っていたら、コロナが流行った。先行きも見えないまま、これ海外は行けないかな〜と思いつつも、どうなるか全く分からない状況なので一応働けるだけ働いていた。ただ、一年使って、数ヶ月の海外旅行だけじゃもったいないと思って、サイト制作の勉強も超スローペースで続けていた。

そのまま夏も過ごし、元の計画はほぼ諦めていたので、ちまちまと散財していた。いろいろ金使ったな、あんなに経済的余裕を味わったのは人生で初めてだ。それでも、8月の時点で30万以上残っていた。今の段階で世界がこの状況じゃ100%無理だな、と遅すぎる判断をして、働く理由も無くなったのでバイトを休んだ。社会の変化に置いてかれないように、自分も切り替えて何かできることを、と思って、もともと基礎の基礎だけ勉強していたサイト制作の地続きのような形で、プログラミングを勉強し始めた。

正直、プログラミングとの出会いは衝撃的でした!!ってわけでもないし、めちゃくちゃのめり込んだわけでもない。今でもやらなきゃ、って気持ちで動く日もあるし、やる気出ないなって一日触れない日もある。でも、これから始まる就活ではプログラマー職を目指そうかなと考えている。こんなぬるい勉強の仕方でなれるのかは知らないけど。ぬるくとはいえプログラミングをかじれば当然プログラマーという職業が視野に入るわけだけど、そのときに、あれ、プログラマーって俺の理想の働き方に近くない?と思ってしまった。フレックス制が多く、場所によってはリモートワークが可能なので満員電車に毎日乗る必要もない。ひたすら外を回って営業して回ることもない(多分)。おまけに専門性がある分給料が若干良い、、、。もちろんその分大変さもある。調べると、向いてる人向いてない人とか色々出てくるけれど、一般企業の営業職とか総合職が持つ大変さよりも、プログラマーの方が性に合う大変さな気がした。

ちなみにバイトは、貯金が底をつきそうになって焦って10月から再開したんだけど、完全に怠けてボケていたので給料は働いた1ヶ月後に入るという社会の常識すら忘れ、死ぬほど金欠になり、クレジットカードに頼りながら生き延びた。コロナでシフトが削られているので思うように稼げず、いまだに貧しい思いをしている。でもまあ外出ることもないし、携帯代とサブスク代だけ稼げればなんとかなるか。実家暮らし最強。

あまりに思ってたのと違う、不自由な休学期間を過ごしてしまったけれど、色んなことを考える時間は別に減ったわけではなくて、結果的に将来の方向性もうっすらと手がかりが見えたりしてるので、休学はして良かったと思ってる。この一年で本を読むようになったのも大きな変化。それまでの人生で読んだ本の数なんて片手で数えられるくらい本と距離を置いて生きてきた。文学部なのに。文学部なのにって思って読み始めた。今では、子供の頃から本を読めば良かったと心底後悔している。もしそうだったら、一体どれだけの本を読めていたんだろうと。自分の子供には教えてあげよう。読書、結構ゲームより楽しい時あるぞって。

この一年、たくさん生まれた変化を今年活かせるよう励もう。